母さんの書棚を見ていて、遺言書を見つけた。
土地の評価証と一緒に、僕と佳子に向けた手紙の形式で。
5年ほど前に書いたものらしい。
優しくしてくれてありがとう。
もし私が入院するようなことになっても、
延命措置はしないで、痛みを和らげる処置だけしてください。
私は充分に生きました。思い残すことはありません。
涙が止まらない。
佳子と二人で、しばらく何も話さずに泣いた。
母さん。
優しくなんてしてないよ。
もっともっと、してあげたいことがたくさんあったのに。
もう少しだけ、待っててほしかったよ。
ごめんな。